大会会長挨拶

疲労研究・診療の礎を維新の地・山口から

野島 順三 大会会長 第11回日本疲労学会学術集会を、2015年5月15日(金)、16日(土)の2日間にわたり、山口市で開催させていただきます。本会は、ストレス・疲労全般を科学的に解明し、国民の健康な生活に寄与することを目的に、厚生労働省疲労研究班および文部科学省疲労研究班などが母体となり、平成17年に発足した「日本疲労学会(Japanese Society of Fatigue Science)」の学術集会です。本学術集会は、生理的疲労・病的疲労(身体的、精神的)・慢性疲労・産業疲労などの疲労全般に関する研究発表・知識の交換・会員相互の連携協力を行うことにより、わが国の疲労研究の発展、医療の質の向上に寄与することを目的とし開催いたします。

 日本疲労学会学術集会は、これまで東京、大阪、名古屋、熊本、福岡、秋田で開催されてきましたが、今回、中国・四国地域としては初めて山口で開催させて頂くことになりました。「疲労研究・診療の礎を、維新の地・山口から」をキャッチフレーズに、科学の最先端の技術、知識、方法を駆使しての疲労研究で得た脳科学・神経学・病理学的な研究成果を集結し、環境ストレスや疾病に伴う二次的疲労、そして病的疲労の代表的疾患である慢性疲労症候群(CFS)の克服にチャレンジします。

 特別講演では、東北大学医学系研究科・器官解剖学分野・教授の大和田祐二先生に「脂肪酸結合タンパク質を通して、栄養・疲労・疾患を理解する」というテーマでご講演頂きます。栄養状態は、疲労回復や病気を考えるうえで重要であり、近年、主要栄養素の一つである脂質摂取バランスの異常が、心身ストレスや疲労、さらには炎症や精神疾患の病態にまで深く関与していることが明らかとなってきました。大和田先生には、細胞内の脂肪酸結合タンパク質(FABP)の研究から見えてきた、脂質栄養とストレス・疲労、さらには炎症性疾患や精神疾患との関連についてご紹介頂きます。また、本学術集会の締め括りとして、CFSの診療に携わっておられる先生方の連携協力の場として「慢性疲労症候群の診断・治療に関する臨床カンファレンス」を企画いたしました。臨床カンファレンスのみの参加も可能ですので、ストレス・疲労患者の診療に携わっている医師・看護師・臨床心理士の皆様の多数のご参加をお持ちしております。

 三方を海で囲まれ、西の小京都と呼ばれる山口。この季節の山口は観光に最適です。日本最大級のカルスト台地:秋吉台、東洋屈指の大鍾乳洞:秋芳洞、日本海に浮かぶ海上アルプス:青海島など、おおらかでダイナミックな自然が満載です。また、幾度も時代の転換期の舞台となった山口県で歴史浪漫の旅はいかがでしょうか。高杉晋作や伊藤博文など明治維新期に活躍した多くの逸材を輩出した吉田松陰先生の私塾:松下村塾(2015年NHK大河ドラマ「花燃ゆ」の舞台となります)、大内文化の最高傑作であり日本三名塔の国宝:瑠璃光寺五重塔、学問の神様・菅原道真を祀った日本最初の天満宮:防府天満宮、木造五連アーチ橋で日本三名橋の一つ錦帯橋など歴史的建造物もたくさんあります。そして、学術集会を開催する山口県総合保健会館は、室町時代からの歴史を誇る湯田温泉に隣接しており、日頃、鋭意専心に疲労研究・診療に務めている身体と心を、山口の名湯と美味しい料理で癒して頂ければ幸いです。

 参加者の皆様が学術集会だけでなく山口の地を楽しんでいただけるよう、“おもてなしの心”でお迎え致します。多くの方のご参加とご発表・展示を心よりお願い申し上げます。

第11回日本疲労学会総会・学術集会会長
山口大学山口大学大学院医学系研究科
野島 順三